
経口補水療法(ORT: oral rehydration therapy)とは,脱水症の改善および治療を目的として水・電解質を経口的に補給する治療方法である.2003 年に公表された米国疾病管理予防センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)のガイドラインでは,
小児の軽度~中等度の脱水状態に対して 経口補水液( は、食塩とブドウ糖を混合し、水に溶かしたものである。これを飲用する事で小腸において水分の吸収が行われるため、主に下痢、嘔吐、発熱等による脱水症状の治療に用いられる。)の使用が推奨されている.わが国では,2000 年代より臨床現場での活用が活発になってきた.高齢者においては,飲水および喫食量の不足によって起きた慢性的な脱水症に対して活用されている.また,暑熱環境下の労働、マラソンや相撲などの暑熱環境下におけるスポーツ領域,手術前後の輸液療法の代用として,熱中症の治療として救急領域でも活用されている.特に,2015 年には日本救急医学会から,熱中症診療ガイドライン2015 が公表され,その中で熱中症患者に生じた脱水症に対して ORT を実施することが推奨された.今後,熱中症対策として ORT を早期に実施することで,熱中症の進行および熱中症による臓器障害の発生を抑止することが期待される.
著者情報 谷口 英喜
2015 年日本生気象学会雑誌 / 52 巻 (2015) 4 号 /P. 151-164
キーワード: 経口補水療法,経口補水液,脱水症,熱中症, 水・電解質
2015 年日本生気象学会雑誌 / 52 巻 (2015) 4 号 /P. 151-164
【J-STAGE】
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